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2007年09月10日 Archive

::: 男はヤリ逃げだ。 :::

ぽってぃんが、まだ赤ん坊だったある夜のこと。

眠っていたら、誰かがわたしの上に乗っかってきた。
「パパ?」

そのころの旦那は帰りがいつも3時4時で、
わたしたちは先に寝ていたので、帰ってきた旦那が
ふざけてのしかかったのかと思った。

目を開けてみたら、バンダナで覆面をした知らない男だった。

夏の夜だった。
クーラーがなかったので、網戸のままで寝ていた。

一瞬意味がわからなかった。真っ白になった。
となりにはまだ歩くことすらできない娘が寝ている。
恐怖のどん底だった。


男はわたしの口を手でふさいだまま、小さな声で
「赤ん坊を殺されたくなかったら、おとなしくしろ。
 外には見張りもいる。」
といった。

体が硬直して動かなかった。
涙が流れた。

「いま生理なんです・・・」とワケの分からない嘘をついた。
精一杯の抵抗だった。
それでも男はやめなかった。
涙が流れた。
声を出せば娘が殺される。
恐怖しかなかった。


男は自分のモノを無理矢理突っ込もうとしたが
そんな状態のわたしにうまくいくわけもない。

何度か試したあと、舌打ちしながら、男は去った。


震える指で、110番した。
しばらくしてから、お巡りさんがふたり来た。
「またか。」とめんどくさそうにいった。

怖いからひとりにしないでくれ、と頼んだが、
それは仕事じゃないとつっぱねられた。

旦那の仕事場は歩けば30分はかかる。
パトカーに乗せていってもらえないか食い下がったけれど、
「うちはタクシーじゃないからねぇ。」と断られた。

裸足で、娘を抱いて、夜道をとぼとぼ歩いてた。
急に車がきて、わたしの横に止まった。
心臓が飛び出そうだった。

よく見ると、さっきのお巡りさんたちだった。


旦那の仕事場に着くと、うちの車が止まっていて、
店には明かりがついていた。
でも、中には誰もいない。
ガチャガチャやっても、ドアも通用口もカギがかかっていた。

しかたなく、泣きながら娘を抱えてひきかえした。


眠れるわけもなく、家中のカギをしっかり閉めて、
旦那の帰りを待った。
心細くて、怖くて、永遠みたいに長かった。

やっと帰ってきた旦那は
すがる思いで話すわたしの一部始終を聞いたあと、
薄ら笑いを浮かべながらこうたずねた。

   「どうだった?」

絶望的だった。

ついこないだ、ふと思った。
あれは旦那が仕組んだのかもしれない。
それならすべてのつじつまが合う。


次の日、現場検証があった。
大勢の警官が、どかどか狭いアパートに入ってきた。

その間にも、担当の刑事のところには2〜3度、
携帯電話に強姦の通報があった。
「この辺、最近多くてね。」といっていた。

そのあと、事情聴取で何度も同じことをいわされた。
屈辱だった。
性的な事件になると、いつでも女は辛酸をなめさせられる。
おかしいじゃないか。

看護婦でなく看護師と呼ばなくちゃいけない、
なんて決める前に、もっと重要で根本的なことがあると思う。
制度が変わっても、男と女の体のしくみは普遍的なものだから
だまって飲み込むしかないのだろうか。
男はただ逃げて、何の痛みもない。
そんな世の中でいいのか、フニャチン野郎ども。


そのときのシーツやパジャマは全部、
朝の生ゴミで出してしまったから証拠がなかった。
戸締まりをしていなかったことも責められた。

わたしはその日娘と実家に帰り、
すこし落ちついたころにすぐ引っ越しの準備を始めた。

引っ越しの準備も、旦那は仕事だったから、朝から夜中まで
カギを閉めきった蒸し風呂のような家の中でひとりでやった。
それでも一刻でも早くこんな場所から立ち去りたかった。

雨戸もないようなアパートだったから、
その間にも3回、のぞきがあった。
ことばにはできない恐怖だった。


その後、夫とは例のことで別れたけれど、
本当に男はずるいと思った。

そして病気がきっかけで、
わたしは正常な性的関係がもてなくなってしまった。


アンちゃんとも、無理だ。
最初はだいじょうぶだったのに。

でも一旦我に返ってしまうと、
盛りのついて手に負えない動物にしか見えなくなってしまう。
汚らわしくて、卑しいことに思えてしまう。

昼間は手をつないでもへいきなのに、
ひどいときには、夜になると触れられるのもいや。
もちろんいっしょのふとんで寝るのだけれど、
服と服がこすれただけで、ビクッとしてしまう。

それだけじゃない。
寝ているときでも起きているときでも、
すこしでも物音がすると跳ね上がってしまう。


だから、アンちゃんとは、つき合っている3年近くの間、
そういう経験は指で数えられるくらいしかない。

真剣に話しても、分かってもらえない。
彼自身のせいだと思いこんでしまう。
それもわかっているし、
1年に3回しか会えないのに男だからつらいのもわかる。

そうじゃない、そうじゃないのに。


そんな話し合いをくり返すたびに、重くて陰気な空気が流れる。
もう、どうしてできないのかを話すのも疲れた。
無理に合わせて、あとで大泣きしたこともある。

ただいっしょにいるだけで、それだけでいいのに。
そうしたら、全部うまくいくのに。

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KiKi Maillet
KiKi Maillet


1970年6月
KiKi 日本に生まれる

1976年12月
Antoine くんフランスに生まれる

1993年2月
長女・Papillonette 出産

1997年5月
KiKi, 初めての海外旅行で Paris へ

2002年
Antoine くんと KiKi 出会う

2005年1月31日
Antoine くんとの記念日

2008年12月
KiKi, Paris 郊外・Courbevoie に移住

2009年1月24日
Châtellerault にてめでたく入籍予定

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